五章︰予告
“第43話 大戦激化(予告編)”
──戦争が始まってしまった。
そう思ったのはいつの日だったろう。
生まれたときから、世界のどこかで争いが起こっていた。
どこかのお偉いさんの都合だったのかもしれないし、国や、民族同士の亀裂が大きくなる原因が、昔からあったのかもしれない。
そんなふうに理由をつけながら、世界はずっと争っていて、人はいつも神に祈っている。
とある幼い少年もまた、神に祈った。
『父さんと母さんが仲直りできますように』
それは“家族という最小の集団”の争い解決のための、祈りだった。
少年・シエルは、物心ついたときから、熱心に天に向かって祈っていた。
なんでも、父が別の人を好きになって、母は気を病んでしまったらしい。だから、優秀でない子は、もう“要らない”のだと、ある日の母は言った。父もまた、お前が生まれたせいだと僕を責めた。
少年にはもう、わからなかった。
だれが被害者で、だれが加害者なのか。
人は相手を好きだから、愛を誓うのだと、聞いていた。
家族は支え合うものだ、と、教会のシスターは教えてくれた。
村の家庭に響く怒鳴り声の背後に、巨大な爆発音が響いたとき、少年は思った。
──ああ、また、戦争が始まってしまった。
テスフェニア公国の、一度目の襲撃。
帝国育ちの少年の前に謎の銀髪男が現れたのは、その日のことだ。
遠い日の記憶。もう夢か現実かも覚えていない、ただの夢まぼろし。
────……
──……
「これより、〈全軍遠征〉の作戦会議を始める!」
結社のボスの声が響いた。
今日、新たな争いが始まろうとしている。
- Next comming soon!!